◉1冊目『ねえねえ なに はこんでるの?』(ほるぷ出版、2020年)
どんな車が何を運んでいるのか、中はどうなっているのかを、幼い子どもにわかりやすく紹介する仕掛け絵本『なに はこんでるの?』シリーズの3作目。木材運搬車、アスファルトフィニッシャー、タクシー、水槽付き消防ポンプ車、デリバリーバイク、福祉車両の6種類が登場する。
「何運んでいるの?」という問いに、折りたたまれたページを開くと答えが。水槽付き消防ポンプ車では水槽と救命用具が、福祉車両では車いす利用者が描かれている。最後はパノラマ4ページ分に6つの車両が勢ぞろいして賑やか。
★「運ぶ」の歴史が知りたい人は
『はこぶ』 鎌田歩/作・絵 教育画劇 2014年
「運ぶ」をテーマに社会の発展を見る絵本。肩で荷物を担ぐ棒から、牛車、人力車などが出現し、私たちに身近な乗り物(タクシーや通学バス、ピザ店の配達バイク、クレーン車など)も盛りだくさん。最後のページは宇宙ステーションへ物資を運ぶロケット!人類は人や物を運ぶために実にさまざまな道具や機械を作り出してきたことがわかる。(坂口美佳子)
◉2冊目『でんしゃでいこうでんしゃでかえろう』(ひさかたチャイルド、2002年)
電車旅で「やまの駅」から「うみの駅」までをたどるというページ構成の、臨場感ある絵本。後ろから読んで「やまの駅」まで戻ることもできる。
旅の途中には5つのトンネルがあり、雪山から渓谷の鉄橋、海辺の丘から菜の花畑、など大胆に景色が変わるのが楽しい。トンネルの入口・出口には穴あき仕掛けがあり、次の景色を垣間見ることもできる。
車内の乗客の子どもたちが兄弟げんかを始めたり、外の風景の中では猿の親子が電車を眺めていたり、細かい書き込みもおもしろいので、じっくり読んでみてほしい。(坂口美佳子)
◉3冊目『じぶんでよめる のりものずかん』(成美堂出版、2018年)
193種の乗り物がカテゴリー別に紹介されているコンパクトなカラー図鑑。説明はひらがなで書かれていて簡潔だが、子どもの興味にしっかり応えてくれる。
子どもに人気の消防車やパトカーから、ごみ収集車、田植え機、めったにお目にかかれない世界最大の車「バケットホイールエクスカベーター」(地下に石油や石炭がある土地を掘る車)や、「貨物輸送宇宙船こうのとり」まで、バラエティ豊かな乗り物の世界を次々紹介してくれる。
★もっと詳しい説明を読みたい人は
『小学館の図鑑NEO 乗りもの 鉄道・自動車・飛行機・船(改訂版)』 レイルウェイ・ピクチャーズほか監修指導 小学館 2013年
700種以上を紹介する乗り物図鑑。1つずつに丁寧な説明があり、読み応えも十分。特に電車と車についての情報が豊富。(坂口美佳子)
◉4冊目『はしれ!みんなのSL』(交通新聞社、2020年)
主人公は埼玉県の秩父鉄道で運行している蒸気機関車「SLパレオエクスプレス」。運行日の朝の点検から、熊谷〜三峰口間を一往復して帰ってくるまでを描いた絵本。運転席のまわりにあるボイラー圧力計や汽笛ハンドル、石炭を投げ入れる焚き口など、なかなかお目にかかれない装置も詳しく描かれている。
観音開きのページには、SLの動く仕組み(石炭を燃やして水を温め、つくった蒸気の力で動く)が図示されていてわかりやすい。巻末の「ぜひ知りたいSLのこと」は、日本でSLに乗れる場所や、機関士と機関助士の仕事について紹介されており、SLの魅力が伝わってくる。(坂口美佳子)
◉5冊目『新幹線のたび』(講談社、2014年)
はるかちゃんとお父さんは新幹線に乗って、おじいちゃんとおばあちゃんに会いに行く。早朝、雪降る新青森駅を出発し、「はやぶさ」「のぞみ」「さくら」を乗り継いで、夕方、桜の花びら舞う鹿児島中央駅に到着。約12時間の日本列島縦断旅だ。
全行程がパノラマイラストで紹介されているので、読みすすめながら起伏に飛んだ日本の地形を体感できる。またよく見ると、新花巻駅には宮沢賢治、京都の鞍馬寺には天狗など、日本各地の名所旧跡やゆかりのある人が描き込まれている。車内の乗客も時間によって様子が変わるので見飽きない。本の最後には大きな「パノラマ日本地図」が付いている。鹿児島中央駅を一番下にして、見たこともない角度で描かれた地図は圧巻だ。(坂口美佳子)
◉6冊目『やこうれっしゃ』(福音館書店、1980年)
40年以上読み継がれている、文字のない絵本。上野駅から金沢駅まで、乗客たちの様子を通じて、昭和の夜行列車の旅を紹介する。
スキー板を持って乗り込むカップルや、夜泣きする赤ちゃんをあやす母親など、乗客の様子からそれぞれの旅に想像がふくらむ。はじめのページに戻って、駅構内の群衆の中から気になる乗客を探したり、現代の車内との違いを見つけて楽しむこともできる。(坂口美佳子)
◉7冊目『まよなかのせんろ』(アリス館、2016年)
最終電車が過ぎ去ったあと、真っ暗な線路に現れたのは「マルチプルタイタンパー」という、ゆがんだ線路を修理する大きな電車。レールの高さやゆがみを細かく測り、レールを持ち上げて、枕木の下のゆるんだ砕石を突き固めていく。
作業員たちも大忙し。散らばった砕石を掃いたり、レールの歪みが直っているか仕上がりを確認する。これらの仕事のおかげで、電車は安全に走ることができる。普段なかなか見られない夜中の仕事現場を伝える1冊。
★空港で働く人や機械を知りたい人は
『巨大空港』鎌田歩/さく 福音館書店 2019年
同じ著者による、成田空港を舞台にした絵本。朝から夜中まで働く人々を紹介している。観音開きのページには、空港ビルの断面図があり、入国審査や保安検査場、搭乗口などが細かく描きこまれている。飛行機が離着陸する場面は迫力満点。(坂口美佳子)
◉8冊目『ライト兄弟はなぜ飛べたのか』(さ・え・ら書房、2005年)
ライト兄弟は飛行機を発明するとき、どんなことを考え、どんな工夫をしたのだろう?ライト兄弟がたどった道筋に沿いながら、紙を使って飛ぶ仕組みに迫る本。
本には14もの実験が掲載されている。1枚の紙に息を吹きかけて揚力を調べてみたり、さまざまな種類の紙飛行機(まっすぐ飛ぶデルタ飛行機、遠くまで飛ぶ三角グライダーなど)を作って飛ばしてみるなど、存分に楽しむことができる。
ライト兄弟の発明についても写真とともに丁寧な説明があり、当時の状況がよくわかる。(坂口美佳子)
◉9冊目『進化する船のしくみ』(誠文堂新光社、2014年)
海に囲まれた日本にとって「船」の輸送は欠かせない。この本では、現在使われている船を、①物を運ぶ船(コンテナ船、タンカーなど)、②人を運ぶ船(フェリー、海上バスなど)、③特殊な船(南極観測船、軍艦など)、④船の親せき(深海探査船、潜水艦など)に分けて紹介。多様な船が一覧できる。
また、科学の進歩に伴う船の進化や、浮力・重力の仕組み、船に関係する仕事など、さまざまな角度から船の魅力を伝えている。船を研究する著者の熱意が伝わる1冊。(坂口美佳子)
◉10冊目『機関車・電車の歴史』(福音館書店、2002年)
2本のレールの上を走る車は、中世ドイツの炭鉱で使われた木製のトロッコが発端だ。科学技術の進歩と変遷を追いながら、トロッコから新幹線まで、世界の機関車・電車250台以上を紹介する図鑑。
著者は乗り物の絵本作家の第一人者。絵のすばらしさは言うまでもない。それぞれの車の構造や原理、全長や重量などの仕様、最高時速、社会的な影響まで、詳細な説明があって子どもも大人も夢中になる。
★飛行機の歴史を知りたいときは
『飛行機の歴史』 山本忠敬/著 福音館書店 1999年
同じ著者による、飛行機のイラスト図鑑。空を飛ぶことを夢見ていた時代の彫刻や絵画から、スペースシャトルまで420機以上が紹介されている。人類の空へのチャレンジの数々に圧倒される。(坂口美佳子)
――「科学道100冊」特設サイトから転載