表紙も裏表紙も、草や木の実やタネの絵でびっしり埋め尽くされています。よく知っているくだものや木の実もあれば、全く見たことがないものや、これは何?と思うものまで・・・

ゲッチョ先生の草木の実コレクション』盛口満/文・絵、少年写真新聞社、2021年7月、1800円+税
そして表紙をめくると、何やら小さい点々がこれまたびっしり。これは、1本の木からどのくらいどんぐりが落ちるか、1本の木の下の地面の1/4に落ちていたどんぐりを毎日著者が拾い集めた結果です。何月何日にいくつ落ちていたか、小さい字で日付も書いてあります。結果、10月4日から12月25日までに拾ったどんぐりの数は2498個(点々と思ったのは、拾ったどんぐりの絵だったのです!)。拾い集めたのは木の下の1/4ですから、実際に落ちたのは4倍して9992個、この1本の木から大体10000個のどんぐりが落ちたことになります。表紙と見返しのマニアックぶりに、本書への期待が膨らみます。
まずは「おいしい」実の数々。野山で熟しているのを見つけると、つい手に取って口に入れたくなります。きっと著者もそうなのでしょう。昔の子どもたちは何がおいしくて何が酸っぱいか、または食べられないかなど、普通に知っていたことでしょう。今の子どもたちはここに描かれている実のうちどのくらいを、実際に触ったり食べたりしているだろう・・・と気になります。
おいしい実をつけることも、草木が旅をするための戦略の一つなのです。つまり、人間だけでなく鳥や動物もおいしい実があれば喜んで食べ、そして別の場所に行って糞をします。鳥や動物に運んでもらって生まれた草木から離れたところにタネが蒔かれるのですね、糞という肥料と一緒に。
私たちが食べているおいしい果物も、もとはと言えばこのような野生の植物でした。例えばリンゴ。「先祖はどんな?」のページにあるように、リンゴの仲間の野生種はさまざまあります。どれも小さいし、甘いものも酸っぱいものも、固くて食べられないようなものもあります。人間は長い時間をかけて、そんな中で少しでも甘くておいしい実をつける木を探して育てていき、改良してきたのでしょう。そうやってできたリンゴにもまたいろいろな品種があります。大きい「世界一」や黄色い「王林」、スーパーで普通に目にする「フジ」などの他に、ゼリーなどの加工用リンゴや観賞用のリンゴもあるそうで、改めてその多様さに気づきました。
もちろん、タネの旅する戦略は果実をおいしくするだけではありません。例えばドングリ。コロコロところがってどこまでも進んでいくこともあるでしょう。でも大半のドングリは、栄養いっぱいのタネを狙ってくるネズミやリス、カケスなどによって親木から離れた場所まで運ばれていきます。日本にもいろんな種類のドングリがありますが、著者は世界中を回ってドングリを集めているようです。アメリカやヨーロッパのドングリはそれでもドングリらしい形をしていますが、東南アジアのジャングルのドングリたちになるとひどく変わった形のものもあります。自然って、本当にさまざまですね。
動物が意図して運ぶものだけではありません。動物の毛にくっついて遠くまで運んでもらうというやりかたもあります。実の表面にとげとげをつけて、動物の体に引っかけて運んで貰うもの、ネバネバの液を出してこれで動物の体に張り付いて旅するものなどです。野原を歩いていて、衣類にくっつくと取るのが大変な草の実たちです。
その他にも風に乗って遠くまで飛んでいくタネ達、水の中に落ちて海流に運ばれていくタネなど、実にさまざまな戦略でタネたちは旅をするのです。でも、全く動かなかったのに、大陸そのものが動いたため大きく移動した植物もあると、知りました。バオバブです。アフリカ、マダガスカル、そして遠く離れたオーストラリアにも存在するのは、太古の昔それらの土地がひとつながりだったことの証だそうです。 なじみ深いタネ、見たこともない、不思議な形の世界のタネ、これらはすべてゲッチョ先生のタネコレクションだとか。見るだけで世界旅行をしている気分になれます。
(科学読物研究会 小川真理子)
出版社によるこの本の紹介記事は、下記のURLからご覧いただけます。
https://www.schoolpress.co.jp/topics/item/c-740_1.html

































